「少年漫画」
というのはつまり少年*1を対象にして描かれた漫画なんである。
少年のために描かれたコンテンツをいちいち批判してしまうのは、自分が対象年齢から外れつつあることに気が付かないヤングアダルトのみなさんであればまだ微笑ましい。しかし、成人や中年のみなさんが必死になって「批評」しちゃうのはアニメ批判に必死になるPTAの方々と同じくらいにはグロテスクな行為だと言わざるをえない。
まだ精神的に未熟な年齢に対するコンテンツ*2というのはとかく体系化しがちで、大雑把に言わせてもらうなら80%は「バトル漫画」という典型をとる。
これは別にドラゴンボール的なテンプレートのみならず、一見違ったジャンルのようにみえるスポーツ漫画、ラブコメだとかちょっと前に流行ったバクマンだとかもちょっと読めばストーリーの骨子はバトルものだ(強弁)。恐らくこのバトルという要素はオトコノコの本能に訴えかけるためのエッセンスなのだろう。
んで
「最近の漫画(少年漫画)はつまんないっすわ~w」
って言ってるお兄さんやおっさん、そら10年以上同じようなテンプレートにそった作品(某大手雑誌に連載されている作品であれば10年以上も展開の引き伸ばしが行われている)ばかり読んでたら「飽き」を感じるのは極めて健全だし、ゆえにお前らはすでに対象年齢から外れていることを自覚して欲しい。
ぶっちゃけ少年漫画なんてテンプレ展開上等のコンテンツだ。なんせターゲットは既存の作品をほとんど読んだことのない少年なんである。「使い古された展開」はつまり「エンターテイメントの王道」なわけで、予備知識のない子供向けにハニーバターのようなテンプレ王道が直球で提供されるのが少年漫画の魅力なのだ。妙な味変は大人のエゴでしかない
この辺は安定的な金づるが失われることを恐れるあまり連載の引き伸ばしを行って、読者の卒業を妨げるようなやり方が横行してる出版社側にも罪があるような気はするが……いずれにせよ子供のものをいい年した大人がとりあげて貶めるのは大変みっともない。
その点、うんこ・ちんちんの面白さよりも異性への興味が勝るような年齢になったら卒業していい、と言っていたコロコロコミックの編集長の考え方は非常に素晴らしい(雑誌の中身はともかく)。
そして上で述べたように批判はもってのほかだけども、賞賛も基本的にはすべきではないと僕は考えている。
なぜか。
大人は子供よりも財力があるので、大人が子供向けコンテンツに参入して散財することでコンテンツの方向性が曲がってしまうからだ。
そして大人は子供よりも数が多く発言力もあるため、「大人様が考えた推薦図書」のようなものが簡単に出来上がってしまう。
例えばDr. STONEは全方面隙なしのヤバい作品だとおもうけど、それはそうとして公共の場で大人がいちいちそういったものを褒めそやすべきではない。色々と理由づけはできるが、そもそも子供の秘密基地に大人が立ち入るのはマナー違反だ。
自分が思春期だった頃を思い出してほしい。自分で選んで楽しく読んでるコンテンツに対して親が「大人の視点」からあれこれ感想を繰り出してきたら面白くないだろ?
しかし小学校の児童がアンパンマンやおかあさんといっしょを卒業して、コンテンツ自体への言及すらしなくなるように、良い大人は少年マンガを卒業して言及をやめるべきなのだ。
「大人の鑑賞に耐える」というのはひとつの賛辞ではありえるが、常に正解ではない。大人の鑑賞に耐えるアンパンマンを幼児が常に楽しめるかどうかは難しいところだろう。
例えば大人の感性でお子様ランチを評価すれば、種類だけ多い割にどれも甘ったるくて似たような味付け、おまけにデザートまでついてて胸焼けするよこんなの……と言った感じになるだろう。たぶんこれは正しい評価なんだろうけど、でもある年齢の子供にとっては旗の乗っかったクソ甘いオムライスが大正義の大正解なのだ。
そこで無理やりセロリのピクルスを添えたりして大人が食えるようなものに仕立て上げるのは可能だろうけど、そんなものは子供にとってはノイズでしかない。そもそもそこまでしてお子様ランチを食おうとするのは酔狂の類で普通の大人は年齢相応に楽しめるランチメニューのレパートリーを持っているものだ。
児童向けに限った話ではなく、ある種のコンテンツというのは厳格に定められた賞味期限のようなものを持っているものだ。
10代の人間にはホールデン・コールフィールドに自分を重ねて街を彷徨ってしまうような時期が必要であることもあって、そこで突然現れた三十路が「あんな青臭い話に耽溺してしまうとはwwwワイなら憤死コポォwwwww」などと言い始めたら当時のお前らはどうおもいますか? あるいはそんな溺れる16歳自身が8歳の少年にライ麦を押し付けて「こういうものをちゃんと読むべきでお前が見てるものは子供騙し」とか言い出しちゃったら……?声掛け案件で警察沙汰ですよね?
貴方達の中には子供時代に楽しんでいるコンテンツを親や兄弟に貶されたことがある人がいるはずだ。
あるいは「子供はこういうのをみて楽しむべきだ」と何かを押し付けられた経験がある人もいるだろう。
あるいはそれが"子供っぽい"コンテンツからの卒業のきっかけになったり、成長につながるちょっとした背伸びのきっかけになったこともあるだろうからそれら全てを悪と断じることは出来ない。
ただただでさえ少子化が進んで子供向けのマーケットが縮小していくであろう日本の市場で、甘ったるいお子様ランチをおっさん好みのせんべろおつまみへと魔改造するような世の中にはなって欲しくないなと願う次第。
余談
色々書いたけど、別に大人が少年ジャンプを読んだっていいし小学生が青年誌を読むのは……レーティングの問題とかがあるのでやっぱあんまりよくないかもしれない。まぁでもそれぞれ、個人やご家庭の自由にするのが一番。
そもそも少年誌にしたって描き手や編集部みたいな送り出す側の人たちは全員いい大人なんであって、もちろんある程度分析的な向き合い方をしてはいるだろうけど基本的には自分たちが作ってるものを愛していてそれを生業にしている。
何がいいたいかっていうと、何が好きでもいいけど大人は大人らしく振舞いましょうという落としどころです。