タオルケット体操

サツバツいんたーねっとでゲームとかガジェットのレビューとかをします

Issueの属性に優先度を使っちゃいかん

おそらくは既知の話題。

古きよきIssue管理システムの各チケットにはたいてい「優先度」という属性があった、ある時代があったようにおもう。
これはやめましょうねという話。

だいたいこの手のシステムだとIssueをあげた本人、あるいは連絡を受け取った人がその場の雰囲気で「優先度: 高」とかをつけて、そこから開発チームがスクラムイベントとかそういう場でそのチケットの「優先度を判断」することになる。
チケットにはすでに優先度が付与されてるのに優先度を判断ってどういうことだよあーっ!? 優先度: 高 のラベルがついてるんだから最優先でやれッッ!! あの……優先度が高いチケットはすでに100枚くらいあるんスけど、最優先ってことは他のは優先度低いってことっスか?

どうしてこういう問題が生じるのか?
それは優先度、というそのIssue単体で機能しない概念を、しかも全体観を把握していない個人が主観で付与しているのが原因である。

Issueが主観で書かれているのは正しい(もちろん発生している事象が客観的に記述されている必要はある)。
しかし優先度は現場が相対的に評価するもので、なおかつ流動的に変動するものだ。
「低、中、高」みたいな粒度で管理できるものではない。

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NIH症候群の逆襲

僕がプログラマーになった20代前半の時期は、ちょうどRubyやPythonが日本でもキャズムの峠を越え始めたあたりだったようにおもう。
なので最初の数年間は、当初の所属組織がSIerやハードウェア寄りのお堅い環境だったのもあって
「OSSはとにかく最高でバンバン使え」
「(他人が作った)小さいパーツをとにかく組み合わせろ」
「自分で書いたコードは少ないほど良い」
という当初の風潮を無邪気に信用していたようにおもう。
(とはいえ僕がプログラミングを覚えた言語であるPythonは他と比べると比較的堅実で、標準でできることをちょっと楽に書けるだけのライブラリは入れるんじゃねえ!というような文化はあった)

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技術的特異点<シンギュラリティ>……についてビジネスメ〜ンが真顔で語ること

ChatGPTをはじめとした"AI"たちはもちろんすごい成果なんだけど、すごいオモチャと煽り文句にテンションあがってAGAがどうとかシンギュラリティがどうとかはしゃいじゃうのはどうなのかなと。
そもそも"AI"ブームでハシャぎすぎて社会の変革がどうとか煽りまくって失望するくだり、もう何遍やってるんですかと。

まずシンギュラリティの定義を勝手に書き換えてる人間があまりに多い。Marketing Fraudと呼ぶのもどうかとおもうようなめちゃくちゃな理屈でシンギュラリティを語ってる。
「シンギュラリティはもうキてるといっても過言でもないんですよ」
とか言い出しちゃう始末。過言ですよ過言。

そもそものシンギュラリティの定義自体がデンパっぽい飛ばしで、そこがSFファン的にはまあまあ面白いねっていう。
ざっくりいうと

  1. 人類+1 くらいの知性(人間、じゃなくて人類なのがミソ)を人類が創造する
  2. 人類+1 君は 人類+2 君を創造できるだろう
  3. このプロセスが指数関数的爆発力で進行した先に、(当時の)人類の想像をはるかに超えるような超知性が誕生する
  4. 神の世界……

こんな感じ。
言い方は悪いけど、まともな科学的予想というよりは世紀末に流行ったニューエイジ思想の残滓みたいなもんだと捉えた方がよい。LSDキメてイルカと遊んだりとかそういう世界観。
まかり間違ってもクソ真面目なスーツのビジネスマンが語るような内容ではないとおもうんだけど、なんでこんなに市民権を得ているんでしょうか。世間知らずなのでほんとに疑問です。


とりあえずオリジナルでは2045年にシンギュラリティが来るとか言ってたはず(ちょーうろ覚えだけど作者はナノテクやバイオテクノロジーの進化に過大な期待をしてたような気がする)で、これもどうかなとおもうけど最近ではもう2025年に来るとかトバしまくってる人がX(formerly known as Twitter)とかでふって湧いてくる始末。
2045年については知らんけど、25年はまずもって無理。陰謀論規模の秘密計画が地下で進行でもしていない限り、原義通りのシンギュラリティはくるわけがない。
ちょっと考えればわかるけど、シンギュラリティの理屈自体がすでに穴だらけ。ましてやいまのChatGPTらの延長線上にシンギュラリティは存在しない。偉大なる科学者じゃなくても、こんなのはちょっとしたSF好きですらすぐ気がつくようなモンじゃないのかな。

まずAGI(ワオ)の定義からして人類の手に余る。なんだよ、最初の一歩でもう躓いている。
「強いAI」よりは哲学色が薄いから扱いやすい、あるいはアルファベット省略だとカッコイイみたいなアホくさい理屈でAGIが使われているのかもしれないが、いずれにせよ人類はまだ「知能があるもの」「知能があるように振る舞っているもの」を区別する術がない。それこそ攻殻機動隊よろしく、「ゴーストの発見」みたいな超展開が必要になる。
もうここだけでブログどころかブ厚い書籍一つ分くらい議論できる領域だろうけど、仮に知性が発生したとして、それが人類とコミュニケーション可能な存在なのかも怪しいのではなかろうか。
そう、GPUブン回して無数のテキストやピクセルデータを食わせたキメラから仮に「ほんものの知性」が生まれるとして、それが人類と相互理解可能な存在であるかどうかは厳しいだろう。むしろ人類が世界中で憎しみあい、殺し合っている現状を省みれば最悪の敵が誕生してしまう可能性は十二分にある*1

しかしまあ、人類の上澄みというものは本当にビックリするくらい賢いのがいるので、OpenAIかどっかがAGA……じゃなくてAGIレベルの知性を創造できたとしましょう。
しかも人類が吐き捨てたゴミを捏ねて作り上げたそいつは、健気にも創造主であり、知的にも一歩劣るサルを愛してくれた。
さらにモチベーションが高く
「私たちは、これからもう一段階高い知性を作り上げます。一緒にシンギュラリティの階段をひとつ登りましょう!」
とまで言ってくれた。可愛すぎワロタ。

ここでひとつ問題が生じる。
いまあるChatGPTでもGeminiでもClaudeでもなんでもいいけど、あいつらはとんでもないエネルギーコスト、そして無数の著作人格権を踏み躙って文化的コストをかけて錬成している。
そうして生まれているのがあのポンコツ共だ。
いや、ほんとに「テキストを扱うシステム」としては既存の技術とは別格の存在で、最近は画像とかもいい感じに認識できていたりしてオモチャ扱いするにはマジで迫真がすぎるくらいなんだけど、「知性を創造する」という誇大妄想じみた理想から言えばまさにポンコツ以下の存在だというのをどれだけの人が理解できているのか。

いまの生成AIのために人類がかけているエネルギーコストは文字通り未曾有の規模だ。トレーニングに必要な電力消費もそうだし、そもそもトレーニングのために製造しているチップのコストもとんでもない。しかもブン回すからあっという間に廃棄されるだろう。
「地球がもんたんときがきている」
というセリフがSF以外でこんなにも真に迫って語られる時代は今までに存在しなかった。
なんどでもいうが、それで生まれているのがあのポンコツ。

かわいいかわいいAGIのChatGPT-5くんをトレーニングして、動作させ続けるのに必要な電力はいかほどでしょう?
もちろんエネルギー消費がネックになるのはまともな企業なら理解していて、例えばマイクロソフトは核融合発電に巨額の投資をしていたしGoogleもなんか色々と発電所作ったり、あと実は使ってる電力のうち空調にかかる割合がトンデモなく多いので北国にデータセンター作るのとかもありがち。
ともかく、MSくんの計画通りにことが進むなら、2028年には核融合が実用化ということで契約が進んでいるとか。2025年には間に合わないッスねww

よしじゃあ仮にChatGPT-5に必要な電力はいまの発電でオーケーだとする。ビットコイナーを絶滅させたりとか、あと打ち水とかをして耐えれば全然イケる。っていうか地球広いし余裕っしょ、温暖化とか嘘らしいし、エアコンで冷やせばいんじゃない?ひやっし〜w

ところでシンギュラリティに必要なのは知性の爆発的成長なので、2025年中にChatGPT-[6, 7, 8, ...] を作って人類をアッと言わせてベーシックインカムさせないといけない。
つまりサルがちょ〜〜〜〜苦労して作ったChatGPT-5くんは、自分よりすごいChatGPT-6を年内に創造したい……そこで問題だ!このクソ暑い地球でどうやって 知性+2 をひり出す?

  1. 超知性のChatGPT-6は突如反撃のアイディアがひらめく
  2. ダイソン球から宇宙人がきて助けてくれる
  3. つくれない。現実は非情である

オレとしては答え2に○をしたいところだけど、ダイソン級を作るくらい成熟した文明圏から宇宙人がきたらAIを作る意味がないから……答えは①しかないようだな!

あのね、あまりに希望的観測。というか過程に過程を重ねて遊ぶのは高級な遊びですけど、ビジネスの世界で根拠なしにそれをやるのは詐欺です。
もうね、本当にちょびっとのさわりだけ書いただけですでに「2025年にシンギュラリティ」とかいってるAI驚き屋がどんだけ嘘つきなのかわかる。なに?ぼくの主張するシンギュラリティはデンパのレイおじさんのやつじゃなくてもっと広義の社会的変革を指したシンギュラリティだから2025年に達成可能???定義から動かして良いゲームだったんだ、じゃあ1984年にシンギュラリティは達成されてたって主張しようかな。


ブロックチェーンに続いて壮大なインチキである生成AI、いやまあどっちもオタク的近視眼で述べれば技術的にはおもしろいとおもうが……
そういえばちょっと前に「ITはつまらなくなった」みたいな記事が反響を呼んでいた。
僕もITに夢はなくなったなと感じている。
それこそシンギュラリティみたいな夢物語が語られていた時代、ハイテクは社会を変えて世界を救う、みたいなビジョンが存在していたようにおもう。ハッカーと呼ばれる人たちのうち、とりわけ能力が高い連中をウィザードと呼んでいたのもそうで、当時のヒッピー達にも人気があった指輪物語のウィザードのガンダルフは元々創世に関わる神格だったりする。

近年はITをネタに誇大妄想を語るのも落ち着いたかなとおもっていたところで、さきにもあげたビットコインやOpenAIが社会の変革を謳ってくれたわけだけど、どっちも本当にうさんくさい。
ブロックチェーンはようやくまともな活用をされるのかな、というフェーズに入っているようにもみえるがまだ課題は山積みだし、いままでに無駄遣いしたリソースの終始があう日が来るのかは怪しい。
OpenAIまわりも本当に動きがうさんくさい。諸手をあげて賛成とは言えないし、リソースの使い方やカネの流れ方が本当に異常だと感じる。

この二つの誇大妄想は、実際のところそれなりに有望で使い出のあるものだとはおもうが、それらを支えるリソースについて、正直僕はけっこう悲観的だ。
そもそも社会問題といえば、気候をはじめとして地球規模で起きている変動こそがすでに特異点を超えて転がり落ちていく可能性すら普通にありえるし、人類の社旗情勢も相変わらず不安定だ。

せめて息子の世代くらいは平穏に過ごせてくれよ……と願っている中で、先にバズっていたITがつまるだのつまんないだの、正直なところどっちもどっちで、どっちもどっちなあたりがほんとにおもんねえなとおもってしまっている*2
「DIYって楽しいですよね!」
っていう程度には技術的追求は楽しいが、地球がバリバリにおかしくなったり世界中で超使われてまくっているOSSのメンテナが困窮していたりGoogleとかAmazonがOSSに平気でフリーライドしていたり、そういう夢のない世界はつまんねえなとおもう。

「コンピューターくんが社会の道具として成熟した証拠だよ、楽しい幼年期は終わりなのさ。それはそうとしてカタカタするのは楽しいからいいじゃん」
なんて嘯いて楽しくて遊びたいところだけど、じゃあなんでシンギュラリティみたいな雑ワードで世間が浮かれているんだってイライラして、していたのが今日です。

*1:差別語を連発するBOTとかね

*2:そもそもつまんねえな、みたいな個人の感想に対して感情的な反論をする人は心の理論の発達が心配になる