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生成AIの革新が人類の利益になるという直球の嘘

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便利な道具である、あるいは便利な道具として進化中であることは事実だろうが、そこで語られるストーリーの多くには嘘が含まれる。
いわゆるhypeってやつ。

エーアイ、特にAGIとかシンギュラリティを論じている人間の姿はカルト宗教にかなり近い。
彼らの語る世界観はこうだ。
「ある日人間を超えた真なる知性が降臨なされ、人道、宗教、気候変動、その他もろもろ全ての問題は解決される」
「AIの恩恵はこの大気と同じようにあまねく人類へと行き渡るのである。いま貧しきものこそが最もその恩恵をうけるであろう」

何の根拠もなく、現世利益を説く姿。
一部の資本家が莫大な利益を独占し、人類の上位層がそのおこぼれを拾い、その他の多くの人々は被害を被っている現状を無視し、人類の利益だとか救済といった耳障りだけは良い誇大妄想をぶん投げる姿。
かなり近いと書いたが全文撤回。これでは新興カルトそのものだ。

現状の、現実の話をしよう。
生成エーアイくんに限らないが、この手の技術はおおむね搾取と窃盗によって成り立っている。

人類の利益のため、多くの著作物は盗まれている。
人類の利益のため、先進国からすれば子供のお小遣い程度の賃金で被搾取国の人々は暴力的コンテンツの仕分けをさせられている。
人類の利益のためなので気候変動を完全に無視してエネルギーを消費している。

どうやら資本家やその支持者にとって、一部の国の人々は人類の範疇にはいらないらしい。
あるいはマッドサイエンティストよろしく「人類の利益のための尊い犠牲」なのかもしれない。
いままの歴史……を紐解くまでもなく、どっかの聖地を占拠している"民族"が虐殺を肯定し、西洋諸国もそれに乗っかっている現状をみるに「人類」とはホモ・サピエンスを指すわけではなく権力者による恣意的な分類を指すのは明らかで、恐らくは前者だろう。

* * *

メシア・AIが現世に降臨なされるかどうかは神学的議論を要するが、少なくともいまあるOpenAIとかGoogleとかその辺の企業が人類の利益のためには活動していないーーあるいは人類の利益のためには一般人の犠牲は致し方ないと考えているーー現状は明らかだろう。
つまり企業利益のために、宣伝を駆使して支持を受けながらエーアイ開発をしているのだ。
実在児童の虐待画像を学習データに使うという信じられないような非人道的行為も、なあなあに誤魔化して許された雰囲気に持っていけるのがカネの力だ。
どんなに高尚な思想をもってやっていても人権を踏み躙るような行為は通常容認されないが、巨大な資本はルールの踏み越えを可能にする。

関連企業の好き放題がおおむね容認されているのは各国が人類の進歩を信仰しているからではなく、テクノロジーに疎い政治家たちの知的好奇心が刺激されているからでもなく、彼らの活動が既成事実をもとにグレーゾーンを巧妙に活用しており、なおかつ大きなシノギの臭いがするからだ。

こんな人類の業を煮詰めたようなドブ底からメシアが誕生することはあるのだろうか?ジーザスもびっくり。

* * *

ChatGPTをはじめとしたサービスは道具として質の転換が起きており「人間の代用品」の枠を超えつつあるのは確かだ。
いまのベースとなる使い方は、無限待機をさせておきスポットで単純な知的作業をさせるやり方で、人間を使うと単体ではショボい利益しか生まない作業のために待機分の賃金が発生してしまう。

ただしこれはAIが「安い」からこういう使い方ができるだけだ。
いまは無料で盗んできているコンテンツに正当な対価を払ったら*1
データ編集のために奴隷労働をさせている人々にまともな報酬を払ったら?
気候変動に考慮したまともなエネルギー生産方法、そして海洋環境に配慮した排熱処理を考えたら?

これらを考慮した上で企業が、単体で利益を出せるAIの利用料金は一体いくらになるだろうか。
少なくともいまの価格では提供できないはずだ。
そんな高価なものがあまねく人類に行き渡る?面白い夢ですね。

冒頭で述べたカルト宗教家の夢に近いことをするには

  1. 学習を続けてシンギュラったAIは突如逆転のアイディアをひらめく
  2. イケメンのサム・アルトマン率いるOpenAIが奇跡の質的転換を遂げて、いままでとは全く違うアプローチのAIをリリースする(なんか怪文書公開してたし、社内の技術者もめっちゃ自信満々だというウワサは流れているが……)
  3. このまま一部の人を踏み躙って廉価販売を続ける

雨の日に路上で安く傘を売っているやつがいたとして、それがほうぼうのコンビニの傘立てから盗んできたものだったらどうだろう?
貴方は気持ちよく利用できるのだろうか。

とはいえ世の中、綺麗事だけでは食べていけない。
ネオサイタマめいた重金属酸性雨の降る中、横に家族がいるならばたとえ売っているのが盗品だとわかっていても傘は必要である。

問題は売られているのが傘ではなく、むしろライフルに近い代物であること。
正しい使い道もあるが、概ね世間ではロクでもないことにしか使われていないことである。
ライフルというならば、個人的には小さな大量破壊兵器とも呼ばれるAK-47と同じくらいろくでもなく、ここでは書ききれないくらいに無数の問題を現在進行形で抱えている。

ウーン人類。

ここ数年で大きくなるばかりの厭世感情に任せて色々と好き勝手書いたけど、これほど完全論破されて嬉しくなる文書もないだろうなとおもった。
完全に間違っててくれ〜自分〜。

*1:現にデータの枯渇は問題となりつつある